2008年から2009年にかけて、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、以下、IFRS)に関連した活発な動きが見られました。たとえば、2008年11月に米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission、以下、SEC)が米国企業に対するIFRS適用のロードマップ案 を公表し(日本公認会計士協会ホームページ )、2014年以降、米国企業に対してIFRS適用を順次、強制していく方向性を示唆しました。一方、日本に関連したものでは、2008年12月に欧州委員会(Commission of the European Communities)が日本の会計基準はIFRSと同等であると最終的に決定 し(金融庁ホームページ )、また、企業会計基準委員会(以下、ASBJ)が東京合意における短期コンバージェンス項目が終了 したことを公表しました。さらに2009年2月4日、金融庁の企業会計審議会企画調整部会における審議の結果として、「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」(案) が公表され、2010年3月期の年度の連結財務諸表からIFRSの任意適用を一定の上場企業に認めること、及び上場企業の連結財務諸表に対する強制適用の判断を2012年を目途に実施すること等が提案されました。
本稿では、これら一連の動向の背景を振り返りつつ、国際的なIFRSのアドプションの状況について概観したいと思います。
なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的見解であることをあらかじめお断りします。
1. IFRSについて
(1)構成
1973 年に設立された国際会計基準委員会(International Accounting Standards Committee、以下、IASC)が国際会計基準(International Accounting Standards、以下、IAS)を作成していましたが、2001年4月にIASCが国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、以下、IASB)に改組され、以降、IASBがIFRSを作成しています。また、IASCの時代には解釈指針委員会(Standing Interpretations Committee、以下、SIC)が、現在では国際財務報告解釈指針委員会(International Financial Reporting Interpretations Committee、以下、IFRIC)が、IASないしIFRSの解釈指針を公表しています。
なお、現在もIAS及びSICは有効であり(2001年以降、改訂等されているものもあります)、これらすべてを総称してIFRS(ないし、国際会計基準)と表現されることもあります。
(2)主な特徴
IFRS はプリンシプル・ベース(原則主義)であることに特徴があり、米国会計基準がルール・ベース(細則主義)であることと対比されることがあります。たとえば、収益認識に関しては、米国会計基準には200以上のガイダンスがあると言われますが、IFRSではIFRS18号「収益」(Revenue)とIAS11号「工事契約」(Construction Contracts) のほか、IFRS18号の付録にある20パターンの収益認識に関する例示と4つの解釈指針が公表されている程度です。したがって、IFRSの適用に際しては、その原理・原則を十分に理解し、その趣旨に適合した会計処理を行っていく必要があります。また、IFRSに関する解釈指針はIFRICしか公表することができませんので、会計実務の積み重ねも重要となってきます。
2. 主要諸外国におけるIFRSの採用状況
(1)EU
2002年7月、IASの適用に関する規則((EC)1606/2002)が採択され、2005年1月以降、EU域内の上場会社に対してIASに準拠した連結財務諸表の作成が義務付けられました。
経済統合を果たしたEUにとっては、域内資本市場における会計基準も統合することが急務であったわけですが、新しい会計基準をゼロから作成するのではなく、既存の会計基準であるIASを改善し、これを統一的に採用することを義務付けたのです。
(2)米国
2007年11月、SECは、SECに登録する外国企業の提出する財務諸表がIASBの作成したIFRSに準拠している場合には、米国会計基準による財務諸表との差異調整表なしにこれを受け入れること決定しました。
米国の投資家の3分の2以上が米国以外の企業に投資しており、また、投資先企業の多くがIFRSを採用している状況下においては、企業間の比較可能性の観点等から、IFRSによる財務諸表を受け入れることが投資家にとって有意義であると判断されたのです。
(3)その他の主要国
IFRS を既に採用している又は今後採用予定である国又は地域は、100以上にのぼると言われています。たとえば、オーストラリアは既にIFRSを自国基準として採用済みであり、香港もほぼ完全なIFRSを自国基準として採用済みです。また、2011年からカナダとインドはIFRSを、韓国は韓国語翻訳版の IFRSを採用することを決定しています(金融庁作成資料 より)。
次回は、EU及び米国におけるIFRS採用に至るまでの経緯をもう少し詳しく説明します。
太陽ASG有限責任監査法人
公認会計士 中野秀俊
text : hidetoshi nakano












