会計・監査 Report vol.7 2016年3月期第1四半期決算における会計上及び開示上の留意事項

2016年3月期第1四半期決算においては、「企業結合に関する会計基準」及び関連する他の改正会計基準等が当期首からの適用となり、会計処理及び開示に大きな影響を与えることとなります。

また、改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」についても、原則として当期首から適用となりますので、留意が必要です。

さらに、2015年度税制改正に伴い、実効税率が引き下げられることとなりましたが、2017年3月期以降決算以降に適用となる東京都における超過税率の改正条例が2015年7月1日に公布されましたので、これを踏まえた留意事項についても取り上げることとします。

この他、平成27年5月に改正された「税効果会計に関するQ&A」、四半期報告書の前半部分である「大株主の状況」及び「役員の状況」に関する改正ポイントについても解説します。

なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめ申し添えます。

Ⅰ.企業結合に関する会計基準等

企業会計基準委員会より、2013年9月13日に「企業結合に関する会計基準」及び関連する他の改正会計基準等(以下、改正企業結合会計基準等という)が公表されました。

企業会計基準委員会では、国際会計基準とのコンバージェンスへの取組みとして、企業結合に関する会計基準等について、ステップ1とステップ2に区分して見直しを行っていました。本改正は、2008年12月に完了したステップ1に引き続き、ステップ2として、非支配株主持分、取得関連費用及び暫定的な会計処理の確定の取扱いについて改正を行ったものです。

改正企業結合会計基準等は、表示に関する改正を除くすべての取扱いを同時に適用する場合には、2014年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することが可能(ただし、表示に関する変更は早期適用不可。)でしたが、2015年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からは強制適用されることとなります。

1.会計上の留意事項

(1)支配が継続している場合における子会社に対する親会社の持分変動

支配が継続している場合における子会社株式の追加取得や一部売却等によって生じた子会社に対する親会社の持分変動による差額は、従来、損益取引として処理されてきました。すなわち、当該差額は、追加取得であればのれん(負ののれん)として、一部売却であれば売却損益の修正として処理されてきました。これが、本改正により、いずれの場合においても、当該差額は資本剰余金に計上することとなりました。

また、差額を資本剰余金として処理した結果、資本剰余金が負の値となる場合には、四半期連結会計期間末において、資本剰余金を零とし、当該負の値を利益剰余金から減額することとなります。なお、この処理は、同一連結会計年度内における四半期決算では洗替処理を行いますが、連結会計年度末では翌年度に洗替処理を行わないことに留意が必要です。

さらに、改正前基準では、子会社株式の一部売却等によって親会社の持分が減少した場合には、売却相当持分ののれん未償却額を減額していましたが、改正後は減額しないこととなりました。これは、追加取得時にのれんを計上しない処理と考え方を合わせたものです。したがって、支配獲得後は、支配が継続している限り、償却や減損を除き、のれんは減額されないこととなった点に留意が必要です。しかし、支配を喪失した場合には、のれんは取り崩され、売却損益を構成する点は従来どおりです。

(2)取得関連費用

改正前基準においては、取得とされた企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められる費用は、取得原価に含めることとされていました。改正後は、企業結合における取得関連費用は、連結財務諸表上、発生した事業年度の費用として処理することとされました。ただし、個別財務諸表における子会社株式の取得原価は金融商品会計に関する実務指針に基づき、付随費用を取得原価に含める処理に変更はないことに留意が必要です。

(3)暫定的な会計処理の確定の取扱い

改正前基準においては、暫定的な会計処理の確定が企業結合年度の翌年度に行われた場合、当該確定が行われたときの影響額を、確定した年度において特別損益で処理することとされていました。改正後は、当該年度の比較情報として表示される企業結合年度の財務諸表に、確定による取得原価の配分額の見直しを反映させる処理をすることとされました。この場合、比較情報として表示される1株当たり情報についても、当該見直しを反映させることとなります。当該改正に伴い、2014年5月16日に「四半期財務諸表に関する会計基準」及び「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」も同様の取扱いとする改正が行われています。

(4)キャッシュ・フロー計算書への影響

改正前基準においては、連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得又は売却に係るキャッシュ・フローは、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に計上されていましたが、改正後は「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載されることとなりました。

また、連結範囲の変動を伴う子会社株式の取得関連費用及び連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得又は売却に関連して生じた費用に係るキャッシュ・フローは「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載することとなりました。

なお、適用初年度において、これらに基づく表示を行った場合、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」第9項及び第20項に従い、表示方法の変更を行うこととなりますが、比較情報の組替えは行わないものとされている点に留意が必要です。

2.開示上の留意事項

(1)表示の変更

改正企業結合会計基準等では、連結財務諸表の表示について、以下のとおり、表示科目の名称が変更されることとなりました。

改正前 改正後
少数株主持分 非支配株主持分
少数株主損益調整前当期純利益 当期純利益
少数株主損益 非支配株主に帰属する当期純利益
当期純利益 親会社株主に帰属する当期純利益

したがって、四半期連結損益計算書についても、表示科目の名称の変更が必要になります。記載事例は以下のとおりです。

前第1四半期連結累計期間
(自 平成26年4月1日
至 平成26年6月30日)
当第1四半期連結累計期間
(自 平成27年4月1日
至 平成27年6月30日)
四半期純利益 ××× ×××
非支配株主に帰属する
四半期純利益
××× ×××
親会社株主に帰属する
四半期純利益
××× ×××

また、1算書方式を採用している場合、当期純利益の直後に親会社株主に帰属する四半期純利益と非支配株主に帰属する四半期純利益を付記するとされています。したがって、四半期連結損益及び包括利益計算書の記載事例は以下のとおりとなります。

前第1四半期連結累計期間
(自 平成26年4月1日
至 平成26年6月30日)
当第1四半期連結累計期間
(自 平成27年4月1日
至 平成27年6月30日)
四半期純利益 ××× ×××
(内訳)
親会社株主に帰属する
四半期純利益
××× ×××
非支配株主に帰属する
四半期純利益
××× ×××
その他の包括利益
(以下略)
(2)会計方針の変更に関する注記

改正企業結合会計基準等を当期から適用する場合、会計方針の変更に関する注記が必要になります。当該注記は、当該改正基準の適用にあたり、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用する方法と、当期首から将来にわたって適用する方法のどちらを選択するかによって、また、四半期連結キャッシュ・フロー計算書を作成するか否かによって、記載すべき事項が異なることとなりますが、それぞれの場合における記載すべき事項は以下のとおりであると考えられます。なお、以下では、すべて四半期連結財務諸表上の注記を想定しています。

① 過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合

会計方針の変更に関する注記として記載すべき事項は以下のとおりと考えられます。

  • (ア)企業結合会計基準、連結会計基準及び事業分離等会計基準等を当第1四半期連結会計期間から適用している旨
  • (イ)支配が継続している場合の子会社に対する会社の持分変動による差額を資本剰余金として計上するとともに、取得関連費用を発生した連結会計年度の費用として計上する方法に変更した旨
  • (ウ)当第1四半期連結会計期間の期首以後実施される企業結合については、暫定的な会計処理の確定による取得原価の配分額の見直しを企業結合日の属する四半期連結会計期間の四半期連結財務諸表に反映させる方法に変更した旨
  • (エ)四半期純利益等の表示の変更及び少数株主持分から非支配株主持分への表示の変更を行っている旨
  • (オ)当該表示の変更を反映させるため、前第1四半期連結累計期間及び前連結会計年度については、四半期連結財務諸表及び連結財務諸表の組替えを行っている旨
  • (カ)企業結合会計基準等の適用については、企業結合会計基準第58-2項(3)、連結会計基準第44-5項(3)及び事業分離等会計基準第57-4項(3)に定める経過的な取扱いに従っており、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の当第1四半期連結会計期間の期首時点の累積的影響額を資本剰余金及び利益剰余金に加減している旨
  • (キ)当第1四半期連結会計期間の期首において、のれん、資本剰余金及び利益剰余金に与える影響額
  • (ク)当第1四半期連結累計期間の税金等調整前四半期純損益等に与える影響額
② 当第1四半期連結会計期間から将来にわたって適用する場合

新たな会計方針を当期首から将来にわたって適用する方法を選択した場合、会計方針の変更として上記(カ)から(ク)までの注記は不要となります。代わりに、以下の事項を注記する必要があると考えられます。

  • (ケ)企業結合会計基準等の適用については、企業結合会計基準第58-2項(4)、連結会計基準第44-5項(4)及び事業分離等会計基準第57-4項(4)に定める経過的な取扱いに従っており、当第1四半期連結会計期間の期首時点から将来にわたって適用している旨
  • (コ)当第1四半期連結累計期間の税金等調整前四半期純損益等に与える影響額
  • (サ)当第1四半期会計期間末の資本剰余金に与える影響額
③ 当第1四半期連結累計期間において任意で四半期連結キャッシュ・フロー計算書を作成している場合

四半期連結キャッシュ・フロー計算書を作成している場合には、①または②の注記に加え、以下の事項を(オ)の後に注記する必要があると考えられます。

  • (シ)当第1四半期連結累計期間の四半期連結キャッシュ・フロー計算書においては、連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得又は売却に係るキャッシュ・フローについては、「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載し、連結の範囲の変動を伴う子会社株式の取得関連費用もしくは連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得又は売却に関連して生じた費用に係るキャッシュ・フローについては「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載している旨
④ 改正企業結合会計基準等の適用による損益への影響がなく、「四半期純利益等の表示の変更及び少数株主持分から非支配株主持分への表示の変更」のみの場合

連結財務諸表に関する会計基準第44-5項(5)において、「適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う」とされていますので、この場合においても、「会計方針の変更」として記載することとなります。したがって、上記(ア)、(エ)、(オ)の事項を注記する必要があると考えられます。

(3)追加情報の注記

改正企業結合会計基準等を早期適用した場合、表示に関する定めは早期適用不可であったため、当第1四半期の影響は、「四半期純利益等の表示の変更及び少数株主持分から非支配株主持分への表示の変更」のみとなります。また、当第1四半期は、「適用初年度」にも該当しないため、会計方針の変更として取り扱う必要もなく、四半期報告書では「表示方法の変更」に係る注記も求められていません。

したがって、「追加情報」として、連結会計基準第39項に掲げられた定め等を適用している旨並びに上記(2)における(エ)及び(オ)の事項を注記する必要があると考えられます。

(4)株主資本等関係注記

四半期連結財務諸表規則第92条において、株主資本の金額に、前連結会計年度末に比して著しい変動があった場合には、主な変動事由を注記しなければならない旨規定されています。改正企業結合会計基準等を適用したことにより資本剰余金や利益剰余金に与える影響額が大きい場合や、支配の変動を伴わない子会社株式の追加取得、一部売却、時価発行増資等により資本剰余金に重要な変動が生じた場合には、当該注記が必要になると考えられます。

(5)企業結合等に関する注記

企業結合等に関する注記項目が以下のとおり改正されています。

① 取得による企業結合が行われた場合の注記

改正前は注記項目の1つとして「被取得企業又は取得した事業の取得原価及びその内訳」を記載していましたが、これに代えて「被取得企業又は取得した事業の取得原価及び対価の種類ごとの内訳」を注記することとされました。

② 共通支配下の取引等の注記

改正前は注記項目の1つとして「発生したのれんの金額、発生原因、償却方法及び償却期間又は負ののれん発生益の金額及び発生原因」を記載していましたが、当該記載は不要となりました。

③ 企業結合に係る暫定的な会計処理が確定した場合の注記

ある四半期(連結)会計期間に企業結合に係る暫定的な会計処理を行い、翌四半期(連結)会計期間以降に当該暫定的な会計処理が確定して発生したのれんの金額または負ののれん発生益の金額に重要な見直しがなされた場合には、当該見直しの内容及び金額を注記するものとされています(四半期連結財規第20条第3項、四半期財規第15条第3項)。

また、暫定的な会計処理の確定に伴い、四半期連結財務諸表に含まれる比較情報において取得原価の当初配分額に重要な見直しが反映されている場合には、その見直しの内容及び金額を注記しなければならないとされています(四半期連結財規第20条第4項、四半期財規第15条第4項)。

暫定的な会計処理の定めについては、改正企業結合会計基準等を適用した年度の期首以後に行われた企業結合から適用する旨規定されています。したがって、改正基準等を当期より適用している場合には、第3項(暫定的な会計処理が確定した場合)の注記は、当第2四半期(連結)会計期間以降から、第4項(暫定的な会計処理の確定に伴い、比較情報において取得原価の当初配分額に重要な見直しが反映されている場合)の注記は翌年度以降から記載する必要がでてくるものと考えられます。ただし、改正基準等を早期適用している場合で、該当する状況が生じている場合には、当第1四半期でも注記が必要となることに留意が必要です。

(6)その他

前述したもの以外に、改正企業結合会計基準等を適用した際の四半期報告書への影響として、「セグメント情報」における会計方針の変更が与える影響の記載、「主要な経営指標等の推移」及び「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」における表示科目の変更があげられます。

特に、「主要な経営指標等の推移」では、過去の財務諸表等に対し遡及適用等を行った場合、当該遡及適用等の内容を反映し、その旨注記しなければならないとされています(開示ガイドライン5-12-2)。ここで、遡及適用等とは、遡及適用、(連結)財務諸表の組替え、修正再表示のほか、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定も含まれますので、同基準等の適用に伴い、企業結合に関する会計基準等を適用し、当第1四半期連結累計期間より、「四半期(当期)純利益」を「親会社株主に帰属する四半期(当期)純利益」としている旨の記載が必要になることに留意が必要です。

Ⅱ.実務対応報告第18号の改正

米国において、2014年1月に、FASB Accounting Standards CodificationのTopic 350「無形資産-のれん及びその他」が改正され、非公開会社は10年以内の期間でのれんを償却する会計処理を選択できるようになりました。当該改正により、在外子会社がのれんを償却する場合も想定されることから、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」におけるのれんの償却に係る部分が改正され、2015年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用されることとなりました。

これにより、在外子会社がのれんを償却している場合には、償却処理の修正は不要となりました。しかし、同実務対応報告の適用初年度においては、適用初年度の期首に連結財務諸表において計上されているのれんのうち、在外子会社が前述のTopic 350に基づき償却処理を選択したのれんについて、企業結合ごとに以下の経過的な取扱いのいずれかの方法を適用するとされています。なお、当実務対応報告の適用にあたっては、(ア)の方法を採用した場合であっても会計方針の変更に該当することに留意が必要です。

  • (ア) 連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間に基づき償却する。
  • (イ)在外子会社が採用する償却期間が連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間を下回る場合に、当該償却期間に変更する。この場合、変更後の償却期間に基づき将来にわたり償却する。

Ⅲ.税効果会計における実効税率の取扱い

2015年3月31日付で、「所得税法等の一部を改正する法律」と「地方税法の一部を改正する法律」が成立し、公布されました。これにより、2015年3月期決算において税効果会計に用いる将来の実効税率が変更されたことは記憶に新しいかと思います。

具体的には、2015年4月1日以後に開始する事業年度に、法人税の税率が現行の25.5%から23.9%に引き下げられるとともに、事業税所得割及び地方法人特別税について標準税率を現行の7.2%から2015年4月1日以後に開始する事業年度は6.0%、2016年4月1日以後に開始する事業年度は4.8%にまで段階的に引き下げられる(外形標準課税法人の場合)こととなりました。

ここで、事業税に超過税率を採用している地方団体(東京都、大阪府、京都府、神奈川県、愛知県、兵庫県、宮城県、静岡県)の超過税率の取扱いについて、東京都の改正条例の公布が2015年4月1日と決算日後だったことと、大阪府を除き2017年3月期以降に係る超過税率が公表されていなかったことから、超過税率をどのように見積るかについて検討が必要となっていました。

今般、2015年7月1日に東京都における2017年3月期以降に適用となる超過税率改正が公布されたことから、これに伴う2016年3月期第1四半期決算での影響を解説していきます。

1.東京都における実効税率

2015年7月1日に東京都において公布された事業税の超過税率改正の結果、東京都(外形標準課税法人)の事業税率は以下のとおりとなっています。

平成26年10月1日から
平成27年3月31日まで
に開始する事業年度
平成27年4月1日から
平成28年3月31日まで
に開始する事業年度
平成28年4月1日以後
に開始する事業年度
標準税率 4.30% 3.10% 1.90%
超過税率 4.66% 3.40% 2.14%

また、この改正により、同じく東京都(外形標準課税法人)の実効税率は以下のとおりとなります。

平成26年10月1日から
平成27年3月31日まで
に開始する事業年度
平成27年4月1日から
平成28年3月31日まで
に開始する事業年度
平成28年4月1日以後
に開始する事業年度
実効税率 35.64% 33.06% 32.26%

2.当第1四半期における2017年3月期以降の実効税率の考え方

東京都における改正条例の公布日が7月1日であり、2015年3月期決算時と同様、期末日後であったため、実効税率の算定にあたっても、2015年3月期決算時と同様に、以下の2つの方法が考えられます。

  • (ア)決算日現在の条例(改正前の条例)に基づく超過税率が標準税率を超える差分を考慮して、超過税率を算定する方法
  • (イ)期末日後に公布された改正条例に基づく超過税率が標準税率を超える差分を考慮して、超過税率を算定する方法

2015年3月期決算時と当第1四半期決算時における、上記のそれぞれの方法を用いた場合の、2017年3月期以降に解消が見込まれる一時差異に適用される税率は以下のとおりとなります。

2015年3月期決算時 当第1四半期決算時
方法(ア) 32.34% 32.30%
方法(イ) 32.30% 32.26%

上表のとおり、いずれの方法を用いた場合においても、実効税率が変わっていますので、当第1四半期決算においては、変更後の実効税率(32.30%または32.26%)により税効果計算を行う必要があると考えられます。

3.当第1四半期決算における税金費用の計算

当第1四半期決算における税金費用の計算は、四半期財務諸表に関する会計基準に従い、原則として年度決算と同様の方法により、計算する必要があります。すなわち、繰延税金資産・負債の計上にあたっては、前述の実効税率を用いて計算することとなります。

ただし、従来どおり、重要性が乏しい連結会社における簡便的な会計処理(四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針第20項)や税引前四半期純利益に年間見積実効税率を乗じて税金費用を計算する四半期特有の会計処理(四半期財務諸表に関する会計基準第14項ただし書き)により税金費用を算定することもできるものと考えられます。

4.税率変更に係る注記

税率変更による注記に関しては、税率変更の影響が0.04%であり、その影響は僅少であると考えられることから、必ずしも記載は要しないものと考えられます。

Ⅳ.税効果会計に関するQ&Aの改正

2015年度税制改正において、外国子会社からの受取配当金の益金不算入制度が見直されたことを受け、2015年5月26日に「税効果会計に関するQ&A」が改正されました。

従来、外国子会社からの配当が外国子会社の所在地国において損金算入されている場合であっても、その配当の額の95%が益金不算入として取り扱われるものとされていましたが、2015年度税制改正により、配当等の額の全額が益金算入とされることとなりました。

また、外国子会社配当益金不算入制度の適用対象外とされた配当等の額に対して課される外国源泉税等は、外国税額控除の対象又は損金算入されることとなりました。

この改正により、配当受領を解消事由とする子会社の留保利益に係る税効果に関し、内国法人が外国子会社から受け取る配当等の額の全部又は一部が外国子会社の本店所在地国の法令において損金算入することとされている場合は、受け取る配当等の額について、親会社の個別財務諸表における税負担額から、子会社の個別財務諸表において損金算入され親会社の税負担額が軽減されると見積られる税額を控除した額を、連結財務諸表上、繰延税金負債として計上することになるものと考えられる旨が明らかにされました。

なお、国税庁ホームページの質疑応答事例「外国子会社配当益金不算入制度の対象となる剰余金の配当等の額の範囲について」において、「損金算入配当とは、外国法人から受ける配当において、その配当が現地国で費用になる、すなわち、損金算入されるものをいい、例えば、オーストラリア法人やブラジル法人から受ける配当がそれに当たります。」と記載されています。

Ⅴ.大株主の状況

従来、大量保有報告書等の写しの送付を受けた場合で、当該大量保有報告書等に記載された当該書類の提出者の株券等の保有状況が株主名簿の記載内容と相違するときには、実質所有状況を確認して記載し、記載内容が大幅に相違している場合であって実質所有状況の確認ができないときには、その旨及び大量保有報告書等の記載内容を大株主の状況に注記することとされていました。

しかし、2014年の金融商品取引法改正により、大量保有報告書等がEDINET を通じて提出された場合には、その写しを発行会社へ送付する義務を免除するとされたため、今後、発行会社が大量保有報告書等の送付を受けることは、原則としてなくなることが想定されます。

本改正に伴い、会社が発行する株券等に係る大量保有報告書等がEDINETにより提出された場合にも、従来と同様の記載が必要とされました。

Ⅵ.役員の状況

役員の状況について、四半期報告書においては、前事業年度の有価証券報告書の提出日後、当四半期累計期間において役員の異動があった場合に記載することとされていましたが、企業内容等の開示に関する内閣府令の改正により、施行日である2015年3月31日以後開始する事業年度に係る四半期報告書から、これに加えて、異動後の役員の男女別人数及び役員のうち女性の比率を記載することとされました。

なお、役員の役職の異動のみを記載する場合は、異動後の役員の男女別人数及び女性比率の記載は不要と考えられます。

以上

太陽有限責任監査法人

公認会計士 髙橋 康之
text : yasuyuki takahashi

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